『熊本大学生命倫理研究会論集』 高橋隆雄編/九州大学出版会
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第4号:よき死の作法 (2003)
- まえがき(高橋隆雄)
- =第一部=
- 第1章:細胞における死の流儀と意義(佐谷秀行)
- はじめに
- 1. 「生」のための「死」
- 1) アポトーシスの概念 2) アポトーシスを遂行する分子シグナル
- 3) 細胞死しぐなるの中継点 4) ミトコンドリア:「生」と「死」を制御する共生生物
- 2. 個体、種の保全におけるアポトーシスの役割
- 1) 臓器、組織構築のための細胞死 2) 自己を守るための細胞死
- 3) 変異を取り除くための細胞死 4) 発生過程における遺伝子損傷が引き起こす細胞死
- 5) アルゴリズムのプロセスにおける細胞死と個体死
- 6) こころの死とアポトーシス
- おわりに
- 第2章:「よい死」をめぐって -いかに死ぬかを考える-(中山将)
- はじめに
- 1. 死の諸相 -問題のありか-
- 1) 問題の手がかり 2) いろいろな死 3) 老と病
- 2. 死の思想 -死ぬということ-
- 1) 概観 2) 赴く 3) 帰る 4) 現代の傾向
- 3. 死の主体 -死ぬのはだれか-
- 1) 人間 2) 他人 3) 自分
- 4. よい死 -よく生きおおせる-
- 1) 「よい」ということ 2) 死にゆく者にとって 3) 見送る者にとって
- 5. 死の統合作用 -受容と意味づけ-
- 1) 死の受容 2) 死の意味づけ 3) よい生へ
- おわりに
- =第二部=
- 第3章:日本のホスピス・緩和ケアの現状(井田栄一)
- はじめに
- 1. ホスピス・緩和ケアの実際
- 1) ホスピス患者の生き方 2) 米国ホスピス運動と医療費削減政策
- 2. ホスピス・緩和ケアの定義と利用開始時期
- 1) ホスピス・緩和ケアの定義 2) ホスピスの利用開始時期
- 3. 日本のホスピスケアの歩みと現状
- 1) ホスピスケアの始動 2) 癌死亡者の死亡場所
- 3) 在宅ホスピスケア 4) 病名の説明(癌告知)
- 5) みこころホスピスの実績 6) 英国のホスピスケアとの比較
- 4. ホスピスケアの利用者の声
- 1) ホスピスの患者の想い 2) 遺族の思い 3) コミュニケーション
- 5. ホスピス担当医師としての私
- 第4章:看護における死(森田敏子)
- はじめに
- 1. 日常から遠ざかる生と死
- 1) 命の慈しみを育む命の誕生と見えない死 2) メメント・モリから死の準備教育へ
- 2. 人間にとっての死・看護にとっての死
- 1) 死の判定、人はそれを受け止められるか 2) 看護は死をどう捉えるか
- 3. その人らしさを支える看取り
- 1) その人らしさの尊重 2) その人の希望に沿う看取り
- 4. 癒しの看護とグリーフワーク
- 1) 癒しの看護 2) グリーフワーク
- おわりに
- 第5章:安楽死について -日本的死生観から問い直す-(高橋隆雄)
- はじめに
- 1. 安楽死と尊厳死の概念
- 1) 安楽死の分類 2) 安楽死と尊厳死
- 2. これまでなされてきた議論
- 1) 消極的安楽死を認めて積極的安楽死を認めない議論
- 2) 間接的安楽死を認めて積極的安楽死を認めない議論
- 3) 積極的安楽死に反対するその他の議論
- 4) 自発的な積極的な安楽死を肯定する議論
- 3. 安楽死と日本的伝統
- 1) 安楽死先進国、日本
- 2) 死者は死者としてこの世に存在する
- 3) 日本の伝統における死者
- 4) 自殺・罪・自由
- 5) 究極のケアとしての安楽死
- 6) 法制化について
- =第三部=
- 第6章:古代日本における死と冥界の表象(森正人)
- はじめに
- 1. 日本霊異記の冥界
- 1) 日本霊異記の転生譚と蘇生譚 2) 中国的冥界観とその継承
- 2. 浄土教における極楽と地獄
- 1) 往生要集の地獄 2) 地獄変相図
- 3. 仏教的冥界観の流布
- 1) 地獄絵を詠む王朝女性 2) 西行も地獄絵を見て
- 4. 日本霊異記を遡る
- 1) 黄泉の国 2) 蘇生譚の基底
- 5. 冥界観の古層
- 1) イザナミの神避りとイザナキの黄泉帰り
- 2) 山隠り、雲隠り
- 6. 天翔る白鳥
- 1) ヤマトタケルノミコトの死 2) 天翔る皇子たち
- むすび
- 第7章:受取人不在の死 -水俣の魂と儀礼・口頭領域-(慶田勝彦)
- はじめに
- 1. 打瀬船を焼く -ゴミ焼き場と魂の節合-
- 1) 出来事の経緯 2) 儀礼という幻想
- 2. 水俣病経験の起源化と脱起源化
- 3. 水俣病と口頭領域
- 1) 「未認定」を選び直す 2) 運転手がいない車(=近代)の恐怖
- 4. 儀礼・口頭領域において節合する記憶群
- 1) 無根拠な起源
- 2) 消されてしまった故郷に留まる人たち 3) 愛されし者の記憶
- 第8章:自然葬と現代(田口宏昭)
- はじめに
- 1. 自然葬とは何か
- 1) 生成する文化としての自然葬 2) 自然葬運動の展開
- 3) 自然葬の実際とその表象世界 4) 消失した葬送の復活としての自然葬
- 2. 家郷喪失者たちと自然葬
- 1) 都市への人口移動 2) 家郷喪失者たちの祖先祭祀
- 3) 祖先祭祀の困難化とその多様な要因
- 4) 「しがらみ」と「きずな」 5) 無縁の0縁
- むすび
- ○ 安楽死・本書関連事項年表
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第5号:生命と環境の共鳴 (2004) 1000円
- まえがき(高橋隆雄)
- 第1章:環境と生命の相互進化(佐谷秀行)
- はじめに
- 1. 生命は地球が生んだ偶然の産物
- 2. 酸素汚染
- 3. 環境変化の緩和による多細胞生物の誕生
- 4. 生命は海を取り込み携帯した
- 5. 循環系形成による環境への適応
- 6. ヒトの進化が与えた環境へのインパクト
- おわりに
- 第2章:生物多様性とその保全(高宮正之)
- はじめに
- 1. 生物多様性
- 1) 生物多様性の登場 2) 生物多様性とは何なのか
- 2. 生物多様性の基本単位である種
- 1) 地球上には何種類の種が生きているのか 2) 種とは何なのか
- 3. シダ植物におけるさまざまな種
- 1) 良種 2) 隠蔽種 3) 半種 4) 無融合生殖種
- 4. 生物の進化と絶滅史
- 1) 生物はどのように進化してきたのか 2) 大量絶滅
- 5. 生物の一種、ヒト
- 1) ヒトの進化と自然 2) ヒトによる6回目の大絶滅 3) ヒトが作った自然
- 6. 生物多様性の保全
- 1) なぜ生物多様性を守る必要があるのか 2) 生物多様性保全の経済的価値
- 3) 生物多様性保全の倫理的考察
- 第3章:環境の成立と意義 -疎外の視点からの考察-(中山将)
- はじめに
- 1. 環境の構造
- 1) 主体と周囲 2) 場と周り 3) 相互作用 4) 再帰と疎外
- 2. 生命と自然
- 1) 生命の動向 2) 自然の本質
- 3. 人間と環境
- 1) 環境への態度 2) 住まう 3) 知る
- 4. 環境の問題化
- 1) 技術と経済 2) 環境思想
- 5. 問題化する環境の今後
- 1) あらたな問題 2) 考えられること
- 第4章:生命と環境の倫理 -ケアによる統合の可能性-(高橋隆雄)
- はじめに
- 1. 生命倫理と環境倫理の統合を考える必要性
- 1) 原理レベルでの乖離と対象領域の重複
- 2) アメリカからの輸入
- 3) 環境倫理の非政策性
- 2. キー概念としてのケア
- 1) 2つの倫理を統合する「ケア」概念
- 2) 自然へのケアを視野に含むケア論の必要性
- 3) よき関係の形式・維持としてのケア
- 3. ケアと権利
- 1) ケア中心の倫理の欠陥 2) 権利による補完
- 3) ケアの補完としての不断の自己評価
- 4. 生命・環境倫理の統合へ向けて
- 1) ケア中心の倫理の展望 -具体的問題への適応-
- 2) 環境政策への提言
- 3) ケアと権利の停滞について -徳の意義-
- 第5章:人類史に及ぼした水俣病の教訓 -水俣学序説-(原田正純)
- はじめに
- 1. 環境汚染の被害は弱者に始まる
- 1) 1956年5月1日 2) 原因は魚介類 3) 原因企業と行政の対応
- 2. 胎児性水俣病の発見
- 1) 魚を食べない水俣病はない 2) 子宮は環境である
- 3) 胎児の障害は人類に何をもたらすか 4) 胎児はヒトか
- 3. 差別とグローバルな視点
- 1) 貧困と差別 2) 何が水俣病 3) 微量汚染の胎児への影響 4) 宝子
- 4. 水俣病への模索
- 1) 環境と「いのち」の循環 2) 枠組み(社会装置)を超える 3) 水俣学
- 第6章:環境対策の技術とシステムづくり -複雑系への取り組み-(滝川清)
- はじめに
- 1. 環境構成要素と環境創造
- 1) 環境構成要素と環境創造 2) 海岸の環境創造
- 2. 環境問題の原因・要因分析と技術
- 1) 環境問題の種類とその要因(過大な負荷)
- 2) 有明海環境悪化の要因分析
- 3) 有明海異変の捉え方
- 4) 有明海異変にいたる原因仮説
- 5) 複雑系への科学的アプローチ
- 3. 環境対策へのシステムづくり
- 1) 環境対策へのマスタープラン
- 2) 複雑系へのシステムづくり
- 3) 環境対策における評価と合意形成
- おわりに
- ○ 事項索引/人名索引
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第6号:生命・情報・機械 (2005) 1000円
- まえがき(高橋隆雄)
- 第1章:遺伝子情報と環境要因 -FAP発症過程に見る-(山村研一)
- はじめに
- 1. 言葉の定義
- 2. 表現型に対する現在の遺伝学的考え方
- 3. ゲノムサイズと遺伝子数
- 1) 生命体の基本単位「細胞」 2) ゲノムサイズ
- 3) 外見正常でも異常な遺伝子をもつ 4) 遺伝要因と環境要因
- 5) 遺伝子研究の限界 6) 一つの遺伝子の表現型への影響力
- 7) 形質と表現型
- 4. 家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)
- 1) アミロイドーシス 2) FAPの概要
- 3) アミロイド形成過程
- 4) トランスジェニックマウスモデルの作製は可能か
- 5) 遺伝子発現、血中レベル、アミロイド沈着の時期的なギャップ
- 6) アミロイド沈着に関与する環境要因
- 7) 4量体の解離に関わる要因の解析
- 8) 変性単量体の凝集に関わる要因の解析
- 9) 血清アミロイドP成分タンパクのアミロイド沈着における役割
- 10) FAPのまとめ
- おわりに
- 第2章:情報環境と人間(中山将)
- はじめに
- 1. 情報の成立
- 1) 主体性 2) 受信のの先位
- 2. 情報と知
- 1) 情報の3段階 2) 心身関係
- 3. 環境としての情報
- 1) 情報環境 2) 主体の行為
- 4. 情報の特異性
- 1) 仮想性と機会性 2) 電子言語
- おわりに
- 第3章:デジタルとバイオ -機械・生命・尊厳-(高橋隆雄)
- はじめに
- 1. デジタルテクノロジーとバイオテクノロジー
- 1) 両者の類似点 2) 両者の相違点
- 2. 生命の世界と機械の世界
- 1) その本質的相違 2) 自然の世界の把握のしかた -欧米と日本-
- 3. 遺伝子の時代の「尊厳」概念
- 1) 従来の尊厳概念 2) 生命と機械の相違にもとづく「生命の尊厳」
- 3) 「生命の尊厳」にもとづく「人間の尊厳」
- 4) エンハンスメントについて
- 第4章:機械と人間の組みあわせについて(船木亨)
- はじめに
- 1. わたしは機械であるか
- 2. 機械と真理
- 3. 人間は機械であるか
- 4. 機械と生物
- 5. 人間工学
- 6. 疲労の現象学
- 7. 巨大なもの
- おわりに
- 第5章:生命と情報をめぐる思想史序説 -カントの有機体論を中心に-(八幡英幸)
- はじめに
- 1. カントの有機体論
- 1) 目的論的判断の事実:自然探求のもう一つの原理
- 2) 目的と見なされる事物一般の特徴:偶然性と規則性
- 3) 自然目的の実例:樹木の自己産出
- 4) 自然目的の2つの条件:全体と部分の相即
- 5) 自然目的としての有機体:自己産出する有機的組織
- 6) 生の類似物としての有機体:環境への適応
- 7) 反省的判断としての目的論的判断
- 2. 生命と情報 -思想史的考察へ-
- 1) 目的論的判断と情報の観点
- 2) 情報伝達の多様性:信号から象徴まで
- 3) 思想史的考察1:ライプニッツとの関係
- 4) 思想史的考察2:アリストテレスとの関係
- 第6章:遺伝情報におけるプライバシーと守秘義務(松田一郎)
- はじまに
- 1. プライバシーと守秘義務
- 1) プライバシー 2) 守秘義務(confidentiality)
- 2. 遺伝情報とその特性
- 1) 個人の遺伝情報と集団の遺伝情報
- 2) 研究で得られる遺伝情報(データ)の守秘義務
- 3) 遺伝子的検査で得られる遺伝情報の守秘義務
- 3. 遺伝情報における所有権の成立と特許
- 4. 遺伝差別の防止
- 1) 雇用における遺伝学的検査と遺伝情報
- 2) 健康保険、生命保険における遺伝学的検査と遺伝情報
- 第7章:医薬情報とビジネス(田中朋弘)
- はじめに
- 1. ソリブジン事件
- 1) 事件の概要 2) 相互作用情報の取り扱い
- 3) 相互作用情報の伝達と解釈
- 2. インサイダー取引の倫理性
- 1) インサイダー取引とは何か
- 2) インサイダー取引の倫理性をめぐる議論
- 3) ネガティブな情報と「重要事実」
- 3. 医薬情報とビジネス
- 1) 組織とビジネス 2) 個人とビジネス
- 3) 医薬情報とビジネス -組織の改編と「名前を変えること」-
- おわりは
- 付論:バイオテクノロジー -小史と現状・課題-(加藤佐和)
- 1. バイオテクノロジーとは
- 2. バイオテクノロジー小史
- 1) 遺伝物質の発見からセントラルドグマまで
- 2) 細胞融合技術、遺伝子組換え技術
- 3) ヒトゲノムプロジェクト、ドリー、ES細胞
- 3. バイオテクノロジーの現状と課題
- 1) 医療とバイオテクノロジー
- 2) 情報とバイオテクノロジー
- 3) 環境・エネルギー問題とバイオテクノロジー
- ○ 既刊総目次/事項索引/人名索引